何もない所から2

前回までの話

夜中に自宅のテレビデオでカウントダウンTVという番組を良く観ていた。
トップ10内に当たり前の様に日本語ラップがランクインされていた時代だった。

ケツメイシ、リップスライム、キックザカンクルー。

ビデオに録画しては翌週のカウントダウンTVが始まるまで何度も見返した。

 
友人とカラオケに行く度に自分を重ねてそれらラップのヒット曲を歌った。


高校生の時よりもラップがブームになっていた。

大学でもバンド好きとラップ好きが半々、いや、大学構内の8割くらいがラッパーに憧れたオーバーサイズの服を着ていた様な気がする。
みんなズボンの裾を引きずりながら大学の講義を受けていた。

 

バンドよりも手軽に始められるし、ラップはくすぶっている大学生にとっては興味の対象だったのかもしれない。
そんな感じだったので僕もわりとすんなりラップ好きを公言出来たし、何ならメールでラップ好きの友人に対して韻を踏んだ日記を送ったりしていた。

ただいざラッパーになったという人はその時は周りにいなかった。
ただのラップ好きがラッパーになるということはとてもハードルが高い様に思えた。

 

初めて踏んだ韻は

『いつかオレのヒップホップに皆がチップ放る』

未来へ向けてのメッセージだった。

 

そんな中、北海道函館市から来ていた同級生の梅川君がアンダーグラウンドヒップホップに詳しく、DJの先輩方とも仲が良かった事もあり、定期的に情報や音源の交換会をした。

「アングラならTHA BLUE HERBがオススメ!!」と言ってCDを貸してくれた。

さらに、僕の住むアパートに宮城県仙台市から来ていた同級生の鈴木君がいた。
彼も
アンダーグラウンドヒップホップに詳しく「アングラならTHA BLUE HERBがオススメ!!」と言ってCDを貸してくれた。

あの時期、僕の部屋には
THA BLUE HERBの『stilling,still dreaming』が2枚あった。

少しづつだけど世界が広がっていくのを感じた。

 


つづく