何もない所から武器を作る方法9

前回までの話

 

ついに、セカンドアルバムのリリース日がやって来た。

僕はミルクティー君に連れられて都内レコードショップを周った。

ドキドキしながらヒップホップ/ラップコーナーへと続く角を曲がった。

あの角を曲がれば陽の芽が見えるとずっと続けて来たラップ。

 

「うわ」

 

思わず声が出た。

 

どこのレコードショップに行っても大展開されていた。

いや、もしかしたら僕のCDだけDVDケースだったので大展開されている様に見えただけかもしれない。

それにしてもあんなに高い所に看板まで付けて頂いて、出来る事なら帰郷してしまった仲間達にも見てもらいたかった。

 

朝まで打ち上げした。

大展開されたレコードショップの光景を振り返り、舞い上がっていた。

 

もしかしたら、音楽だけで生活出来るのではないか?

浅はかながら、その時は全てを賭けて挑戦するなら今なのではないか?

そんな気持ちが先行していた。

 

売り上げ枚数も好調だったし。


仕事を辞めた。

そして、一日中曲を作って夕方になれば渋谷に飲みに行き、その後はクラブに遊びに行くというラッパーみたいな生活を送った。

時には鍋で提供されたレモンサワーを飲んだり。

今は無き新宿のダイニングバー『Life&Trip』で飲み過ぎてお会計を払い忘れて帰宅してしまい、翌日謝罪に伺ったらWANTEDと書かれた張り紙に僕の写真と払い忘れた金額、そして『ハイハイボール王』という肩書きが書かれていた事もあった。

 

日本一のラッパーになりたくて上京して来たのに新宿のハイハイボール王になったのだ。

医師を志しながらDJをするRYU君の主宰するシステマの皆とも良く飲んだ。

初めて神門君に会ったのも確かこの頃だった。

 

 

ただ、楽しい事ばかりではなかった。