ついに、セカンドアルバムのリリース日がやって来た。
僕はミルクティー君に連れられて都内レコードショップを周った。
ドキドキしながらヒップホップ/ラップコーナーへと続く角を曲がった。
あの角を曲がれば陽の芽が見えるとずっと続けて来たラップ。
「うわ」
思わず声が出た。
どこのレコードショップに行っても大展開されていた。
いや、もしかしたら僕のCDだけDVDケースだったので大展開されている様に見えただけかもしれない。
それにしてもあんなに高い所に看板まで付けて頂いて、出来る事なら帰郷してしまった仲間達にも見てもらいたかった。
朝まで打ち上げした。
大展開されたレコードショップの光景を振り返り、舞い上がっていた。
もしかしたら、音楽だけで生活出来るのではないか?
浅はかながら、その時は全てを賭けて挑戦するなら今なのではないか?
そんな気持ちが先行していた。
売り上げ枚数も好調だったし。
仕事を辞めた。
そして、一日中曲を作って夕方になれば渋谷に飲みに行き、その後はクラブに遊びに行くというラッパーみたいな生活を送った。
時には鍋で提供されたレモンサワーを飲んだり。
今は無き新宿のダイニングバー『Life&Trip』で飲み過ぎてお会計を払い忘れて帰宅してしまい、翌日謝罪に伺ったらWANTEDと書かれた張り紙に僕の写真と払い忘れた金額、そして『ハイハイボール王』という肩書きが書かれていた事もあった。
日本一のラッパーになりたくて上京して来たのに新宿のハイハイボール王になったのだ。
医師を志しながらDJをするRYU君の主宰するシステマの皆とも良く飲んだ。
初めて神門君に会ったのも確かこの頃だった。
ただ、楽しい事ばかりではなかった。