何もない所から武器を作る方法54

3月には11枚目のアルバムリリースとともに学校を卒業する。

それまでに仕事も探さなければいけない。

 

ある日の授業で先生がWEB業界は自己アピールコンテンツを作って企業に売り込んだり、逆に見に来てもらうというアプローチ方法もあると言っていた。

 

僕はこの1年で何か突出したスキルを身につけたわけでもない。

スキルでいったら全然普通だ。いや、普通以下だ。

そして、33才だ。

 

何のアピールが出来るのかを考えた結果、行き着く先はやはりラップだった。

履歴書では短所になると思っていたラップだけれど、もしかしたらWEB業界だったら行けるかもしれない。

 

毎日、朝と夜、リリックを書く事を習慣付けているし、ライティングとかキャッチコピーとかもいけるかもしれない。

何より、僕が唯一アピール出来る事がラップだった。

 

すぐに『ラッパー雇いませんか?』というコンテンツを作った。

 

ファンの方が広めてくれたのか、思っていた以上にたくさん面接のオファーが来た。

その中から条件や仕事内容や勤務地を見て、何社か面接に行ってみた。

 

どの会社もラッパーが来るからか、謎に大人数で迎えられた。

ラッパーの期待値が高過ぎて、普通にスーツで行ったらラッパーっぽくないとガッカリされた。

面接で「志望理由をラップで言って欲しい」という無茶ぶりにも対応出来なかった。

僕はある程度ガッカリされた。

 

2~3社面接を受けて気付いた。

普通に面接に行くよりもずっとハードルが高い。

なぜこんな事をしてしまったのだろうか。

 

この時の僕はどうかしていたのかもしれない。

 

でも、その中でも、気に入ってもらえて勤務地や職種も自分の希望に合う株式会社ポッケ様でWEBデザイナーとして4月から働く事になった。

(採用までの一部始終はこちら→【Barしおり】ラッパー雇いませんか?~33歳未経験“狐火”がポッケに入社するまで

 

取りあえず、まだまだ不安はあったが良かった。

そして、3月になり11枚目のアルバム『東京million』をリリースした。

このアルバムは福島から上京して10年目を迎えようとしている自分に向けて作った。

ちょうど、自分自身、また新しい挑戦を迎える春だし。

ずっと憧れていた東京へのイメージを詰め込んだ。

10年前の気持ちを忘れない為にも。

 

ジャケットは何色にもなれるはずが、何色にもなれていない、周りの目に映っているのかわからない自分を透明で表現し、弱い自分を言葉で隠すという意味合いで顔に狐をかぶせた。

そして、センターから右に少しずれているのは、彼女とお別れした気持ちを表現した。

 

このジャケットはクラスメイトに描いてもらった。

 

そして、学校を卒業して4月を迎えた。