4月まで無職になった僕はこの時期に9枚目のアルバム『ネオニート』の制作を行っていた。
このアルバムの制作過程で僕の今後の方向性を左右する出来事が起こった。
なんと、某チェーン店で注文したカレーが全然来ないのだ。
僕はこの些細ではあるが、自分の中の大事件をすぐに曲にした。
『頼んだカレーがまだ来ない』
タイトルで全てが伝わる。
別に曲にしなくても良い。
多くの方がそう思うと思う。
僕はここまではマクロリリシズムを中心にリリックを描いていた。
ここでいうマクロリリシズムとは、何か大きいテーマ、社会的な問題や誰でもわかる様な大衆的な内容の事をさす。
だが、この時、僕はミクロリリシズムの存在に気付いた。
マクロに対しミクロとは、手元の小さな出来事、自分にしかわからない様な、世の中的にはマジでどうでも良い事をさす。
タイトルだけで伝わる物事を1曲で表現出来たらどうだろうか。
ある人は時間の無駄だと言うかもしれない。
しかし、違う。
結果、頼んだカレーがまだ来ない、でも、そのまだ来ない間に色々な事を考えている。
テーマが大きければ大きいほど何か深い事が言えるわけではない事に気付いた。
むしろ、小さなテーマの方が大衆的ではない、アンダーグラウンドな主張が出来る。
独自の表現が出来る。
そして、頼んだカレーがまだ来ない事を曲にしたアーティストが日本にまだ居ない。
開拓すべきものは遥か目線の先よりも、まずは手元にあったのだ。
ここから、リリックの重心をマクロからミクロリリシズムに寄せた。
そして、アルバムも佳境を迎えようとしていた。
何か、あと1つインパクトが欲しかった。
そこで前作同様に別ジャンルからアーティストを客演で呼ぼうと考え、アンテナを張り、毎日インターネットで色々なアーティストの曲を聴いたり情報を集めた。
結果、アイドルグループBiSのテンテンコさんに出会った。