何もない所から武器を作る方法42

サマソニとBBPを経て、僕はライブに関しては恐れるアーティストはいないと思っていた。

どんなイベントに出ても自分が一番インパクトを残せると、そんな自信があった。

もしかしたら、そうやって自分を奮い立たせていたのかもしれない。

 

嘘だった。

1組だけ恐れているアーティストがいた。

 

MCのアフロとギターのUKで構成される2人組、MOROHAだ。

 

先に書いておくと、僕はMOROHAを尊敬しているし、普通にファンだ。

この時期、一緒に飲みに行ったりもしたが飲みの席での何気ない会話すらも有言実行する。

 

数年前に池袋のクラブイベントで肩身が狭そうにライブしている姿を見た時は特に何とも思わなかった。

それがこのわずか数年で大きく変わった。

 

彼らの活動は追っていたが確実に意識し始めたのは、2012年10月に一緒に出演した愛知県岡崎市のクリーニング店跡地で行われたライブの時だ。

この時、MOROHAは最前列にいた親子の退屈そうな子供に対してアンパンマンの歌をあの熱量で熱唱していた。

 

僕はそれを見た時に、もしかして、やられたと思った。

 

今日のライブ、もしかして、MOROHAに喰われたと思った。

 

もしかして、を付けているのは悔しかったからだ。

 

僕は僕なりにがんばっていて、しかも、この2012年はサマソニにも出演した年だった。

それがさらに悔しい気持ちに拍車をかけた。

 

そして、この年(2014年6月)、宮城県仙台市にてMOROHAとのツーマンライブが行われた。

 

今、振り返るとMOROHAが次のステージに飛び立つ為の決別の様なツーマンだった。

別にライブに勝敗なんてない。

ただ、それは口に出さなくてもそこにいるお客さんや何よりも演者の本人達が一番良くわかっている。

 

僕は、この日も、もしかしたら、喰われていた。

 

サマソニやBBPでも味わった事のない感覚だった。

夢が叶った後に高いモチベーションを保ち続けられたのはMOROHAの存在も大きい。

 

成るべくしてなった、そして、成りたい場所に今も確実に向かっている。

 

 

このツーマンライブの翌月、渋谷で行われたポエトリーフェスでまたMOROHAが一緒に出演していた。

僕は大人気なく絶対に負けたくないという気持ちから自分のライブ中にMOROHAを名指しで「あいつらよりオレの方がヤバイ」と言った。

正直、この歳でこんな感情が湧いて来る事に自分自身が驚いていた。

 

 

これに対して、僕の後にライブしたMOROHAが100倍返しの狐火ディスを返して来た。

 

またしても、やられた。

 

この時、僕はMOROHAのライブを凝視し過ぎて、目から血を流した。

そのくらい目を離さず夢中で見入ってしまった。

 

もう笑うしか無かった。

MOROHAはすごいなぁ。

きっと僕がプレッシャーに耐えかねて酒浸りの生活を送っている時も黙々と練習を重ねていた。

でも、それにしても、有難い。

こんなに何年も同じ目線に居て、ずっとヤバく在り続けてくれて。

本当に有難い。

 

この時のポエトリーフェスは僕のせいで何だか荒れてしまった。

ワンダーボーイが生きていたら、仲裁に入ってくれたかな。

いや、多分、一緒に混ざって来て余計に荒れたか。

 

 

もしかしたら喰われたかもしれないと思うライブ終わりの気分は最悪だけど。

そんな気持ち普通に生活していたら出会わない感情だった。

 

悔しくて最悪だ、ライブ後のビールも不味い、でも、楽しいな。

 

ここはまだまだ夢の途中だと再確認出来た。