確かに、観音さんの言う事は一理ある。
なぜ僕はこんなにはっきり記憶があるのだろう。
もしかして自分の都合の良い様に無意識に話を盛っているのか。
危ない。
観音さんのマインドコントロールにひっかかる所だった。
こんな出口のない会話が2時間ほど続き、この一連の騒動に決着をつける方法を思いついた。
そうだ、僕には証人がいる。
梅酢君である。
僕
「梅酢君に真実を確認しましょう!」
観音さん
「いいっすよ!」
あれ?おかしい。
梅酢君の証言で確実に観音さんは追い込まれるはずなのに、なぜこんなに簡単にOKを出すんだ。
まさか、すでに裏で手を回して口止めしているのか。
十分あり得る。
だと、すると梅酢君に確認して追い込まれるのは逆に僕だ。
どうしよう。
目撃者も居たとは思うが、既に観音さんにみんな買収されているかもしれない。
どうしよう。
ここは梅酢君の善意に賭けるしかない。
梅酢君に真実を聞いてみた。
僕
「梅酢君、あの日、観音さんに何かされた?」
数秒の沈黙が流れた。
やはり、口止めされているか。
報復を恐がっている様にも見えた。
これ以上は時間の無駄かと思われたその時、大きく息を吸いはっきりとこう言った。
梅酢君
「財布を取られ中身を車道にばらまかれました!その際に千円札とポイントカードを無くしました!」
観音さん
「すいませんでした!」
ややかぶせ気味の謝罪だった。
観音さん
「これからは人様にビンタされない様なお酒の飲み方を心がけて参ります。」
僕
「うむ。」
観音さんが反省してくれた。
嬉しかった。
だが、翌週事件は起きた。
この日、僕とワンカップさんと観音さんの3人で新宿のスナック『ヒカリコ』へ飲みに行った。
序盤から飛ばしてお酒を飲んでいた観音さんは何を思ったか突然ワンカップさんにアイアンクローを繰り出したのだ。
(※アイアンクローとは、プロレスで繰り出される技の一つである。別名は脳天締め、鉄の爪と呼ばれる。)
観音さん
「ワンカップさん。アイアンクローして良いですか?」
ワンカップさん
「ん?アイアン?何それ?」
観音さん
「これです!」
ワンカップさん
「ギャー!」
ワンカップさんは叫びながら視界0にも関わらず、勘だけで観音さんに両手で2発のビンタを浴びせた。
何だかわからないけど、すごい。
関心もつかの間、僕の脳裏にある言葉がよぎった。