何もない所から武器を作る方法26

夏が涼しくなる頃に。

僕は実家のタロー(犬)の墓前に花を添えた。

お墓は、いつでも寂しくないように家族を見渡せる庭の真ん中に作られていた。

 

僕は気持ちに整理がついたら作ろうと思っていた曲を作った。

 

 

この曲は母親が初めて褒めてくれた曲で、何度も何度も「ありがとう」と言われた。

歌詞を拡大コピーしたものが実家の壁一面に貼られている。

最初見た時は、ものすごく恥ずかしかったけれど、昔だったらまず考えられない事だった。

いや、一度だけ小学生の時に僕の詩が新聞に載った事があって、あの時も壁一面に貼られていた。

それ以来か。

 

嬉しかった。

 

気持ちが落ち着いたら、別れは辛いけれどもう一度、白い犬を飼うと母親は言っていた。

 

ふと、庭のお墓に目をやると祖母が墓前にアイスクリームを添えていた。

 

こうして、僕の夏は終わった。