そして、出番が来た。
10分間のセッティング&リハーサルの後に15分間のライブパフォーマンスを行うのが最終ライブ審査だ。
ステージに出てセッティングに入る。
フロアは真っ暗で静まり返っていた。
ふと、審査員席の方を見ると1人だけ審査員ではない方がいらっしゃった。
しかも、もの凄くニコニコしながら僕の方を見ていた。
まるでずっと僕が出て来るのを待っていたかの様な笑顔だった。
その方は『出れんの!?サマソニ!? 』を主催している株式会社イープラスの橋本社長だった。
社長が自ら最終ライブ審査を見に来ている事と普段のライブのお客さんと同じくらい僕を受け入れる姿勢をとっている姿を見て感銘を受けた。
ここには希望がある。
僕は1つ仮説を思い付く、もし仮に僕のライブパフォーマンスが審査員の審査基準を下回ってしまっても、社長を落とす事が出来ればSUMMER SONICに出演出来るのではないだろうか。
という、仮説だ。
勝負は、どんなに小さな可能性にでも本気で手を出す回数だと思う。
それが原因で失敗する事もあると思う。
その時はとても後悔する。
次は余計な事を考えずただ皆が成功して、そして皆が失敗するようなそんなスタンダードな安全な挑戦をして行こうと思う。
それなら失敗しても皆失敗しているからいいやと思えるし。
でも、恐いのが成功した時は自分だから成功出来たと思ってしまう。
周りを見れば皆も成功しているのに、失敗した時だけ皆を見る。
少なからず僕はそうだ。
結局それでは、そこで成功したとしても、義務教育の先にある答えがほとんど同じだった様に、それでは東京で埋もれてしまう事をここに来るまでに痛感していた。
ギリギリまで可能性を見つけて手を出さないと僕みたいな奴はだめだって。
自分だけの突破口を開かないと、今日までがそうだった様に。
そして前述した通り、僕はどんな手を使ってでも今日絶対にSUMMER SONICを獲る。
絶対に。
当初想定していた生演奏対策として大振りな地団駄で対抗する手段を止めて、審査員と社長に向けたリリックとトークとライブを再構成した。
現場の雰囲気を見て即座にライブ構成を変える事が出来るのも1MC1DJ最小構成ヒップホップの長所だと思う。
軽くリハーサルをしてついに本番が始まる。
本番がスタートした瞬間、なぜかタロー(犬)の事を思い出し涙が流れた事を覚えている。
後は、どうだったか、ただただ夢中だった。
ライブパフォーマンスはあっという間に終わった。
自分の思い通り出来ていたのかもわからない。
『夢中』という字が『夢の中』と書く意味がわかった気がした。
挨拶も早々に済ませ、会社へ出勤した。
陽が落ちるまで、ものすごく暑い夏の1日だった。
以下、最終ライブ審査の模様に関しての関連記事リンクを貼っておきます。
”5組目はソロヒップホッパー狐火。実は動画審査で僕、満点をつけました。伝わりまくった。全員には必要な音楽ではない、むしろ不必要だという人もいるでしょう、そういう意味ではBGMにならない音楽です。でもどこかの誰かには絶対に必要な音楽だと思う。僕はそういう人が好きです。派遣社員なんで午後から会社に行くためにリクルートスーツ姿でのパフォーマンスでした。赤裸々な独白のようなライム。感極まって涙を流したところ、彼のルーツが福島ということも含め、この人から目を離しちゃいけないなと僕は思いました。いいと思いましたね。うん、凄くいいと思った。グッときた。そういうのが好きなんでしょう、僕は。彼は野外ステージでいろんな人に見せたいなって思った。 ダイノジの大谷”
(記事元:http://meets-producer.eplus2.jp/article/282852854.html)
ローリンストーン日本版
http://rollingstonejapan.com/articles/detail/14989