そして、あれから1年が経ち、また今年も『出れんの!?サマソニ!? 』へのエントリーが開始された。
去年とはまた違った気持ちでのエントリーだった。
SUMMER SONICなんて絶対に無理だと周囲には呆れられていたけれど、僕は諦めていなかった。
一次審査は去年と同じ一般投票だった。
ここは皆さんとワンダーボーイのファンの方々の投票のお蔭で無事通過出来た。
問題は昨年落選した二次審査だ。
二次審査は審査員による動画審査だった。
僕は後悔ない戦略を立てて望んだ。
事実、僕が直接何か出来る審査は一次審査と最終ライブ審査で、この二次審査だけは動画頼みという事になる。
だから、この二次審査が一番の難関だと踏んでいた。
ただ、この審査さえ通ればSUMMER SONICにかなり近付ける。
僕が審査用に選んだ動画は1年前にワンダーボーイが亡くなった後に作った『サマーソニック僕に5分だけ時間をください』という曲だった。
これは賭けだった。
動画としては非常にシンプルで、ライブ動画でもなければMVとも呼べない、ただリリックが流れるだけの動画だ。
でも、この曲しかないと思っていた。
もし、この曲が審査を通るとしたら審査員がリリックをしっかり聴いてくれたという事になる。
「僕に5分だけ時間をください」という、自分が昔再起を果たした言葉が通用したのなら、対峙する相手は『商業に重きを置くメジャー音楽業界』ではなく『人』という事になる。
言葉の伏線を張る事が出来る。
それは、最終ライブ審査でポエトリーリーディングが通用するという事になる。