平熱を噛みしめろ。

2020/09/18リリース!!

19枚目のニューアルバム『36.5才のリアル / 狐火』


コロナ禍と長引く梅雨の中で制作された今作は
狭い部屋の中で今の自分に出来る表現と前向きに向き合った19枚目のアルバム。

 

36.5度の体温という可能性の中で過ぎて行く瞬間瞬間を描写したこんなご時世に一石を投じる最新のリアル。

 

【トラックリスト】
01, 
こんなご時世  [Track by mood-ir]

02,  レジ袋(有料版)  [Track by ヤナギサケビ]

03,  トイレットペーパーさらい  [Track by 観音クリエイション]

04,  ハケンの人格  [Track by SHINJI-coo-K]

05,  孤独テレワーク  [Track by Kuwanoha]

06,  Rain man ep.3  [Track by SHIBAO]

07,  オリオン座 feat.高野真理花  [Track by Ekayim]

08,  朝から朝  [Track by seekx]

09,  ベントレーが通り過ぎる  [Track by ikipedia]

10,  36.5才のリアル  [Track by PENTAXX.B.F]

11,  あの老人ホームは今どこに  [Track by Composer TAKE]

リリック


01,  こんなご時世  [Track by mood-ir]

ガードを下げた 両腕の行き先
伸びた爪程 傷は深く
嫉妬飼い慣らす イヤフォン ジャック
わくわくしながら 乗せた 全身全霊

マイクのケーブルがどこに繋がっているかもわからない
初ライブ 楽屋からステージに繋がるバックヤードが
ひどく寒くて 長い 真冬の東北
しんみりさせてしまったなら ごめんて

遠慮ごと飲み干す 華の舞のジョッキ
固唾飲んで見守った 先輩のライブ
何で あんなに いい所でレコードの針が飛んだのか
オレ達 いつもそうだ せっかくいい所まで来たのに

先輩、帰りは音楽で稼いだ金で運転手付きの高級車買って帰るから
だから、新幹線片道切符だって言ってたじゃないすか
それなのに なんで 高速バスだ

くそ

こんなご時世 なんて昔からずっと言われてた

最後の1バースまで逆転の伏線を忘れずに 張りな
あんたらが居なくなってから ずっと一人だ
孤高 なんて かっこ良くも何ともない
東京には 上には 上 いる なんて
最初から何とも思って なかったじゃないすか

今もそう
上には 上がいる なんて 関係ない
過去の自分に学ぶものがあるとすれば
それは 恐いもの知らずで ただ挑戦する
明日や 地位や 名誉 プライド
何も気にせずに ぶらんと下げた両腕からさ
何だって 掴み取れる気で いたじゃないすか

全然 酒なんて飲まなかった
しらふで本気でそう思ってた
忠告だけして 距離を置く 友人もいた
でも、見返してやるんだって
自分に酔ってた わけじゃない

何よりも 続けていたら 何かありそうで
逆を言えば これを 続けなければ
何もなさそうで 大好きな故郷を
井の中とDISって 1歩を踏み出した
あの足は 決して美談じゃないよ

産まれた日から雨男の自分には
地固まる 地団駄という武器が
産まれ日から 備わってた
それだけは 今日も並走し

不器用で優柔不断な自分を杭打つように
東京のアスファルトに 足の骨が折れようが
逃げ出しそうな 心を 打ちつけて
今日まで来た

ろくなもんじゃない 就活氷河期
リーマンショック
コロナウイルス

オレ いつもそうだ せっかくいい所まで来たのに
こんなご時世 なんて昔からずっと言われてた
何度も聞いた北の「OK余裕」
もともと足の骨が折れようが
続ける 底辺に一番近い 音楽に憧れての
新幹線片道切符

あの頃にはない焦燥感を
アルコールに浸して わずかな安心を得て
年に一度の健康診断で上がっていく
アルファベットの先に ベットに寝たきりの自分から
目を背け 今を見る
帰る時は 運転手付きの高級車なんていらない
ちゃんと自分の足だ


 02,  レジ袋(有料版)  [Track by ヤナギサケビ]


舗装されない砂利道にたまる水たまりを避ける長靴
つま先より擦り減っていくかかとをかばう
おりたたまれない傘 いたたまれないあの人
火のない所に煙上がらず
でも、火の子あるところに煙上がらず
わからす SSWO(シンガーソングライターおじさん)
絶えず説教続ける
仮装ユーザー 代表気取り
死を○でくるんで隠す エゴサーチ防止策
四方八方無差別 同意語
強要される発言 YESと言わなきゃ仲間外れ
右か左か向く方向によっても仲間外れ

「それじゃあ、ヒップホップじゃないよ」
また仲間外れ

古くさび付いた考えは 19才の秋に踏んだ韻とともに
踏みつぶして来た
ティンバーランドじゃない 長靴さ
さらりと言う割りに根に持つタイプ
前世は花咲かない 球根かなんかだ

あのアカウントもAIか何かだ
数打てばあたる陰謀論
土壇場でUFO認める真骨頂
シーンがどうのより 自分の足元に変化なし
何ニスト カリオストロ なら仮に城壁に沿って生き残る

いつの間にか 有料になった レジ袋が
空を 飛んでいく ファンタジー

このまま世界が終わるとしても
1人だけ生き残れそうな予感
そんな作文永遠と描いた
中2の春は秋まで続いた

逆にSiriに話しかけられる時代が来る
もちろん答え持ってない質問はイジメと化す
言葉足らず 今に 肌の色だってみんなメタリック
だってそっちの方が平和
主流になったテイクアウト みたいに 寝耳に水
経験にひずみ エクセルに関数
テーブルにマウス 当たり前に 返り討ち
抜け出すスランプ 回収するフラグ
組み立てるプラモデル フラスコの中

折り返し地点でも ノーリターン
荷馬車の子牛抱いて こじらす

今なら遠回しで何かを伝えられるほど
人生は長くないとあの頃の自分に言える

帰り道 引き返し 覗き込む 未来は
だいたい がっかり 晴れ時々 ブタの形相
今も昔も妄想だけは 裏切らない
沈黙の住人 逃げ出さない重鎮
空前の灯と偶然の一致
1ばかり× 掛け算
ただ増えた気になってるだけ
地に落ちてるのに
空を見上げてるだけ

このまま世界が終わるとしても
1人だけ生き残れそうな予感
そんな作文永遠と描いた
中2の春は秋まで続いた

思い出す教室でひとり居残り
彫刻刀で削った帰り道
小6 登下校の延長線上
明日からテンション上げて生き様

思い出す教室でひとり居残り
彫刻刀で削った帰り道
中2 登下校の延長線上
明日からテンション上げて生き様

このまま世界が終わるとしても
1人だけ生き残れそうな予感
そんな作文永遠と描いた
中2の春は秋まで続いた

いつの間にか 有料になった レジ袋が
空を 飛んでいく ファンタジー


03,  トイレットペーパーさらい  [Track by 観音クリエイション]


可能性に手伸ばす満員電車の吊り革
その薄いマスクじゃ防げない発言権
花粉症がつらくてマスク買いに行ったらどこも売り切れ
ネットで高額で転売 これは流行りのウイルスの仕業
じゃない あなたと同じ人間の仕業
これ以上言うとまたうまく行きそうな話がこじれんの
後手 後手に回り様子を見る まだ起きれんの
結果論でしか物言えない口に用はない
今更 論破にも何の意味も感じない

電波じゃなく現場 あの年の3.11から
約10年経って 何も変わらず
プライドだけは震災後の防波堤より高い
なんでトイレットペーパーがなくなった
完全に人間の仕業
また、かけ違えたボタン

天災への憎しみで妖怪を生み出した
先人なら今回真っ先に生み出すのは
妖怪 トイレットペーパーさらい
たらいまわしデマ 
火のない所の煙 煽る メディア

手に手に手に手に
取りあえず洗おう

口 口 口 口
取りあえずマスク

あながち人間が妖怪の正体でも
過言ではない 目に見えてしまう分
新型よりひどいウイルス蔓延
密閉空間が感染を拡大? ライブハウス叩いてみる?
いや、オレのライブより電車の方が混んでるし盛り上がってる実際
思いやりなくした正義 勝っても自己満足
こんな時でも 自分の尻は自分で拭きなよ

そのご自慢の積みあがったトイレットペーパーで
ウォシュレットみたいに全てを水に流せたらいいのに
そんな間にも 福島じゃ聖火リレーの為に整備始めた道路
メッキ加工技術だけはもう職人の域
「聖火がウィルスへ有効」なんてデマ流れれば
沿道は人でごった返す 国民の利子
急な休校で余る給食ような意味

1ロールだけ欲しいだけなのに ケチだ 
デマとパンデミック 新聞紙で鼻かんでみる
愛想笑いを思い出してはにかんでみる
その軽い情報 疑ってみる

手に手に手に手に
取りあえず洗おう

口 口 口 口に
取りあえずマスク

どこから来てどこに去るウイルス
ふいをつく
浮かび上がるお隣さんの本性
向こう10年は消えない後遺症
安全なポジション 高みの見物
選挙じゃなくオーディション
ウイルスより風評で失う 将来の兆し
咳込む東京株式市場
この時期は株価も隔離しておきましょう

舵失ったダイヤモンド・プリンセス
ワイドショーではまた吐いた言葉飲むんです
落ち着いて深呼吸する場所を探す都庁前
横断幕 こう問いただす 舵を持ってるあなた方
鼻で笑う程の 必需品 トイレットペーパーがない
この東京で オリンピック 何が尻ぬぐう
税金 消費される底辺

天災への憎しみで妖怪を生み出した
先人なら今回真っ先に生み出すのは
妖怪 トイレットペーパーさらい
たらいまわしデマ 
火のない所の煙 煽る メディア

1ロールだけ欲しいだけなのに ケチだ 
デマとパンデミック 新聞紙で鼻かんでみる
愛想笑いを思い出してはにかんでみる
その軽い情報 疑ってみる

手に手に手に手に
取りあえず洗おう

口 口 口 口
取りあえずマスク


04,  ハケンの人格  [Track by SHINJI-coo-K]


2020年4月 東京
コロナウイルス 総理 緊急事態宣言
効力を発揮する 日付変われば 何か毎日が変わるはず

面接会場のドアノブよりも躊躇するドアノブを毎日触れる
想像力だけはいつまで経っても発展途上
なになに所詮、ハケンの戯言でしょう

会社の近くのカフェが休業しているのを見て
自分の足元を確かめる 後ろ振り返ると
昨日とあまり変わらない葉桜の下に
サラリーマンの急ぎ足 色とりどりのネクタイ
それ選んでる時にこんな日が来る事は予想出来なかったでしょう

在宅テレワーク でもそのネクタイちゃんと締めるのかな
なんて どうでもいい 想像 でも 他人を想うってこういうこと
10年間 皆が仕事してる間にさぼって隠れてリリック描いた
恩を返すオレのターン
良くみな
東京の電車が窓開けて走る時代が来たよ

明日はどんな風が吹くか なんて誰にもわかりゃしない
忘れはしない 過去ならそう言える
明日このフロアで感染者が出て封鎖
分散される責任 その前にまだ間に合う

まだ今なら 今日なら 
一生分の後悔を帳消しに出来る
批判だけしても意味ないので
提案がたった2つだけある

非常事態宣言の中 在宅テレワークをセキュリティ上の問題で
出来ない派遣社員は リスクと不安を抱えているので
出勤させるなら せめて それ相応の手当てとマスクを支給して欲しい

それと、非常事態宣言中の出勤は休むという選択肢も欲しい
これは会社にとってもメリットがあります
今後のテレワークの促進にも繋がりますし、

何より感染者が出た時点で
事務所 フロア閉鎖 そこに居た人間は2週間自宅待機

それが明日起きるかもしれない 社会的な評価も含め
お互いWINWINなのに 上記2つで現場の士気も高まり
安心もいくらか増す 理想はテレワークだけど今すぐは
セキュリティ上 無理でしょう

もし無症状の派遣社員が 家族へ感染させ それが死へ繋がり
感染経路に会社があったら
あなた方は何も責任を取る事が出来ないでしょう

今、現場にいる派遣社員がたまたまラッパーだったっていうだけで
これは自分1人の 意見かもしれない 
でも、 ばたばたしているフロア 見てる限り
1人の声は その耳に届くまで時間がかかり過ぎる
課長 部長越え天辺へ 届ける手段が
やっぱり これしかなかったから

僕をクビにしてもいいので
次に雇う方の雇用契約書に上記2つを記載してください

想定外でした なんて言葉 耳が腐るほど聞いて来た
心はまだ生憎 腐ってない

ハケンの人格 そぐわない自覚が足りない 失格
首だけ縦に振る クラブは自粛 失脚
視野までトイレットペーパーのロールサイズ
この後、増える自殺率を唱える タイムライン
愛想無い ただ 
今の自分に出来て
未来の自分に出来ないこと

ここで1歩先の最悪を想定して歌うこと
そして、それを然るべき耳まで届けること
明日、後悔するより わずかな可能性を
これは最高の防御であり最大の攻撃

昔から人との距離をとってきた自分が
唯一、至近距離に近付く手段
これが僕の趣味特技ラップ

雇う際の履歴書にも書いてあったでしょ

今ならまだ間に合う

これはお世話になっている会社へ
手の平を返したんじゃなく
濃厚接触をかえりみずに
求めた握手


05,  孤独テレワーク  [Track by Kuwanoha]


ふと湧いた悲鳴にも似たひらめきを
僕はずっと部屋の 隅に置き去りのまま
季節を跨いだ パントマイムの様に
ありもしない壁に塞がれ
パンドラの箱の様な 会議室を出る頃
また誰にも言えない愚痴をしたためる
テレワークの会議中に
同僚のマイクから聞こえた子供の泣き声
そっか そっちは元気そうで 仕事の話を止め
僕はそっと自分のマイクをミュートした
何が在るかわからない未来に押し潰されそうな毎日


ピアノを聴きながらの仕事するよりも
浜崎あゆみを聴きながら仕事してる方が
なんか罪悪感が増すのは何なんだろうか
なんて考えていたら また夕方か
やることやっても残る
不安は 戸惑いにも躊躇にも似ていて
何度クリックしても更新されないタイムラインに何か
新しさを求めるような日々
今日はフローリングをピカピカに磨いた

駆け抜けていく ウーバーイーツ
誰かの孤独を 埋めてくれ
駆け抜けていく ウーバーイーツ


駆け抜けていく ウーバーイーツ
何もしていない事への罪悪感に押し潰されそうな毎日
大嫌いだった満員電車さえも 思い出の中で輝き始める
あれもこれも必要悪 きっともう戻れない
そう思った瞬間 自分の中の何かが消えて
代わりに得たもの
右手と左手でそれぞれのマウスを操作出来る能力
いつか何かの役にたつのかなぁ

泡の様に消えたいつかの6月
世界はこのワンルームで完結
オンライン 朝礼で画面に一瞬映った
上司のハゲ頭見て
久しぶりに笑った気がした


06,  Rain man ep.3  [Track by SHIBAO]

川なんて無いのに
なんで名前「リバーサイド」なのあのアパート
真っ直ぐ空を見上げる涙目
雨を拾い集めた排水溝
びしょびしょの地面 歩いて行こう
ボッとしてる間に忘れた あの花の名前
ほら 梅雨の時期に咲くあの花の名前
なんて言ってる間に リバーサイドの意味に気付く

耳澄ます雨音 
ここ周りより地盤低いから
雨水が集まってくる
多分このアパートが完成した日もこんな雨模様
なんて見上げる 空の向こうは
厚い雲が何重にも重なり
今日は止みそうにないね
なんて言いベランダを背にする

上空から一線を帯びて地に落ちるストライプ
香ったスニーカー かかとから雨水に沈む
いつかのレインコート越しの季節は

何度目かの引っ越しの空
それでも変わらない雨粒を数えてみる
「びた一文すらここにありません」
手をあて数えた 何度目かの赤信号
他人の不幸を観て確認する自分の幸せ
眉間にしわ寄せ 笑うのがやっと
葛藤の先に 重ねた 自画自賛

壁に深く残った 画鋲の穴
外はこんなに雨なのにまた出かける
努力をする度に才能が遠ざかり
ハイトーンのグレーの雲が覆う
今日みたいな日は遠く
聴こえるサイレンが
目指す先まで耳を澄ます
ノックする音が玄関から聞こえる

上空から一線を帯びて地に落ちるストライプ
香ったスニーカー かかとから雨水に沈む
いつかのレインコート越しの季節は

びしょびしょになった靴底
もう水たまりを避けずに進もう
びしょびしょになったいつもの
自分を美化することなく進もう


07,  オリオン座 feat.高野真理花  [Track by Ekayim]


天気図と照らし合わせ 引きで見るグーグルマップ
SNSの様なアイマスク
耳元のつぶやきも飼い慣らす
所詮、目も耳も塞げないのなら
口も塞がない
暗がりだけど裏アカじゃ息してない
音の出ないクラッカーが消してくれた不安だ

インターネットエクスプローラ
通り越してファイヤーフォックス
回り続ける扇風機の羽根
規則につまづきながら脈打つ心臓
ピント合わない毎日を直視
網戸を通り抜けた 風
色変えるオリオン座

当たり前だった風景が
嘘みたい ここにいたい

静かに沈んだ日常
乾かして生きる 今

嵐が去った夜明け前 昨夜が嘘の様にオリオン座
不安をクローゼットに押し込んだ
夜通し灯るコンビニの明かり 誰かの犠牲のうえ
いつもより頭を下げてもらった釣銭をポケット

渦に消えた雑念 暴風が塞いだ耳の穴には
あなたにしか聞こえない今日があったはず
大雨が塞いだその視界には
あなたにしか見えない明日があったはず

あの堤防や防波堤は 誰かの残された願いの結晶
優劣ある列島の避難所 3.11から想定する最悪の事態
期待なら空が晴れた時にしよう 四六時中
当たり前の今日なんて一度もなかった

死のうとするあなたに電話をかけ続けたあの夜もそう
なぜだか窓の外が慌ただしい時ほど
なぜだか明日を生きたいと思う
もう一度見てみたい呆れるほど平凡な日常を想う

くだらないことで笑った
どうでもいいことで泣いた
しょうもないことで怒った
あの家は もう

特別なんてなくても
誰かが側に居ること
多分さ、それが幸せ

ひとつ ひとつ
拾い上げて
磨いていこう

壊れてしまっても
忘れないでいるから
ずっと


もしかしたら世界から見たら平和ボケ でも大切な人
平和でボケたまま 一生を過ごして欲しい
悩み事は全て冷蔵庫の中身みたいな日々が
あの賞味期限はどうだろう みたいな悩みが埋める
あの退屈でしかない日常にこそ幸せがあった
だから、いきなり終わらないで
向かい風も振り返れば追い風

一晩降り続いた大きな水たまり
に映った空は地球で一番青かった
トゲのない風が頬を伝う涙ごと乾かし
まるで何事も無かったかのように振る舞うが
非常食のカップ麺に寄りかかったままの割り箸
バランス失ったフレコンバック

幼い頃、台風翌日に川に流れついた子牛の面倒を見た弟は
30年後、その川の堤防を警備する台風前夜
あの日あの町に輝いたオリオン座
いつかの思い出が流れ着いた
たき火を囲み見上げたオリオン座
何度も越えて越えて越えて越えて
冷蔵庫のソーセージが賞味期限ギリギリだから

たき火で焼いて 賞味期限切れたケチャップをかけて
「大丈夫かな」なんて言いながら食べて
そんな日も見上げればオリオン座
この嵐が去っても言えるでしょう
何気なく
「ところで最近、調子はどう?」


08,  朝から朝  [Track by seekx]


時間差テレワーク 冷めない温度のままのコーヒー
スライドするカーテン 顔出した朝から朝
もう始発走り出す様な勢い
裸足のままでスニーカーはいて 誰かの吐いたゲロを飛び越え
せっかくまた朝がやって来たなら

洗濯機のスイッチ入れて
取りあえず何か始める準備 長いスランプに肩落としながらも
抜け出す糸口を手で探ってる 真っ最中 もうこの際 非常口
なんて 関係なく飛び出して 見てみる世界に飛び込んでみるのも
なんて小心者のオレには出来ません コンビニのレジに並び
伺う 見ず知らずのダレカノの顔色

何かをあてにしているよりも
糧にしたもの頼る週末の空模様
空白から目をそらす様に
気怠い 空気のみ込む缶コーヒー

相手の足元ばかり見てたら
見失う自分の足元
財布の中身と相談しながら
選ぶ 晩酌の酒のあて

今日1日に疲れ果てた方が
ビールの泡だって輝いて見える

抱えて走る もう少し待って
あと少し あと少し って方が
充実した時間が流れてる

詩的に逃げるよりも
素敵に続ける

また朝から朝から夜から夜
昼から飲むビールとバース
そして夜を明かす
自分だけは化かさぬようにさ

バカ騒ぎ するならベッドでピョンピョン跳ねる程度
でも翌朝見た事ないアザが尻に出来ててさ
思わずSiriに質問
昨日の夜のこと教えて 
レモネードの様に混沌とした

ニュース速報 チャンネル変えてもついてくるみたい
一体どうなっちゃった世の中 なんて言わない日はそもそもない
中心で均衡保つヤジロベエの様に
高低差ゼロでも 見上げて保つバランス

お腹空かせた分 湧く想像力に肩まで浸かって
のどに絡まった言葉をゆっくり伸ばして
ほどいてまた結ぶ 行程を楽しむ午前中

もうほっといてなんて言わずにまた耳澄ます

水の流れの様に朝から朝 当たり前に見ず知らずの
誰かの耳元まで流れて行けたら良かったのでしょう


09,  ベントレーが通り過ぎる  [Track by ikipedia]


永遠なんて丁寧に言えば
底辺から見上げた空 そら
延々に手が届かない
この低層階から血相変える
見上げる天井 さえもベソをかく
平凡を握り過ぎたマイクのせいで
手相が変わる なら運命ごと変える

こうしたらどうよりも調子はどう
メジャーの代わりはいくらでもいるが
二足目の草鞋の代わりはいない
このジャンルで第一線を狙うなら
オレがいるうちは到底無理だね
だから、オレより長生きすることが条件
アルバム10枚出した時に話なら聞くよ
じゃあ、またね

ベントレーが通り過ぎる横目
弁当のトレーを洗う 朝方
自分の在り方 あの人の背中とか
フリースタイルの練習を3日で止めたマンションの壁際
青かったはずの隣の芝は枯れた
天武の才 全部ください と願った日々は努力だった

肩の荷よりランドセルの方が 重かったはずなのに今は何だ 
自由なはずの 羽根にさえも 重さを感じるほど猫背
それでも歩ける内は華だね 寄せては返す波の様に
次をまた期待してもいいのかな なんて都合良くは 行かないか

もう戻れない逃げ出したい過去
でも、今なら気持ちがわかる
いつか今の気持ちもわかる今が来るかもと
過去だった今が未来の今を後押しする

永遠なんて丁寧に言えば
底辺から見上げた空 そら
延々に手が届かない
この低層階から血相変える
見上げる天井 さえもベソをかく
平凡を握り過ぎたマイクのせいで
手相が変わる なら運命ごと変える

藁を掴む様な話の先で
雲を掴む様な話しが待ってた
じょじょに薄なって行く希望
取り留めて行くのは気が気じゃないさ
しわくちゃになった頃に何に掴まる
杖の代わりにマイクスタンド
車椅子でも地団駄してみせる
これで後悔も帳消しにする

初期衝動に一生かけて帳尻を合わす
生きる事以外かすり傷
今日も敷き詰めたバースの中にいる
財布の中からアールラウンジのドリチケ
思い返す週末 千鳥足で乗るタクシーが
自分へのご褒美 最高の贅沢
流れる車窓に また描く また今日を見たくて

永遠なんて丁寧に言えば
底辺から見上げた空 そら
延々に手が届かない
この低層階から血相変える
見上げる天井 さえもベソをかく
平凡を握り過ぎたマイクのせいで
手相が変わる なら運命ごと変える

ベントレーが通り過ぎる横目
弁当のトレーを洗う 朝方
自分の在り方 あの人の背中とか
フリースタイルの練習を3日で止めたマンションの壁際
青かったはずの隣の芝は枯れた
天武の才 全部ください と願った日々は努力だった


10,  36.5才のリアル  [Track by PENTAXX.B.F]


会社の会議で部長を前にすると何も喋れなくなり
上司に目で求める助けを 急なパスに上司は支離滅裂な説明
部長からのダメ出しを受ける上司
会議室を出た瞬間 笑い出す上司

上司「急なパスだったな!俺も焦って自分で何言ってるかわからなかったわ」

確かに内容は何を言っているのかわからなかったが
自分にはわかった

僕「すみませんでした、でも何となくわかりましたよ」

上司「いや、いいよいいよ」

ここも捨てたもんじゃない 毎日の繰り返し

上司「次はどこにライブに行くの?」
ノートパソコンの向こうから声が聞こえる

僕「あんまり遠くではないのですが、またお休み頂きます」

上司「いや、いいよいいよ」

妥協して辿りついた社会で
周りに合わせて半透明になりかけた
自分が色を取り戻すために
上司への悪口を詰め込んだ曲中

ごめんなさい なんて事は言わないけれど
いつか
「あいつ昔ここで働いてたんだ」って
居酒屋でテレビ 指さしながら
自慢と酒の肴になれる日を 恩返しとして
音楽の為に飯を食う為の 二足目のわらじ
芸能人の知り合いはほとんどいないけれど
サラリーマンの友達ならたくさん出来たオレの自慢

その日暮らしの 悔しさ や 虚しさ
いつか着る事なくなると思い スーツはしばらく買い替えてないし
雨の日用の革靴は 底に穴空いたみたい
びしょびしょになった靴下 しょうがないな
水たまりだけは最悪 避けてもう少し履いていようかな
という間に晴れ間 荒れた 心さえ 晴れた

ある日、上司が言った
「もし会社辞める時は一ヶ月前には言って欲しい。それは我々にとっても喜ぶべき事なんだもんな」

今日まで10年間かかったので そんなにすぐにわらじは一足になりません
最低でも三カ月前には言います
心の準備も踏まえて まだそんな日が来る予定はありませんけど

ねぇ、そんな日が来る予定はないが

こんな日が来る予定だってなかったよ

ねぇ、

ごめんなさい なんて事は言わないけれど
いつか
「あいつ昔ここで働いてたんだ」って
居酒屋でテレビ 指さしながら
自慢と酒の肴になれる日を 
恩返しとして
音楽の為に飯を食う為の 二足目のわらじ
芸能人の知り合いはほとんどいないけれど
サラリーマンの友達ならたくさん出来たオレの自慢

「ラップをやってるんですけど、仕事はしっかりやりますのでお願いします。
いつか、本当にそれが理由でこの仕事辞める日が来たら皆に良い意味で喜んでもらえるように
がんばりますので」
面接で言ったのもだいぶ昔の話

「中学修学旅行で初めて来た東京 上野で 買った バッタ物 のSPOON(腕時計)
本物を知るまで気付かない偽物に
でも、その偽物もしっかり時を刻んでくれた
あの時間は偽物だったのか いや、そうじゃない」

なんて、会社の朝礼には不向きなヴァイブスの話をした日も

社員の皆さん「さすがステージに立つ人は違うなぁ、話がめちゃくちゃ面白い」

と褒めてくれて 反省点ばかりの話をした後なのに嬉しくなって照れて
フロアの加湿器の給水をすすんで行った 月曜の午前中
振り返る10年前 1人二日酔いで午前休

何かが支えてくれない限り オレみたいなラッパーは成り立たない
誰よりもそれはわかってる 支えてくれたのは二足のわらじ

文字通り両足で 踏みつぶす後悔 
後退 かかとからは下がらない
昨日よりもやっぱり常に今日がいい

オレここで弱くなって強くなった
だから 今に見てろ
「まだまだここからだ」
と今日も言う勇気が欲しい


ありがとう なんて事は言わないけれど
いつか
「あいつ昔ここで働いてたんだ」って
居酒屋でテレビ 指さしながら
自慢と酒の肴になれる日を 
恩返しとして
音楽の為に飯を食う為の 二足目のわらじ
芸能人の知り合いはほとんどいないけれど
サラリーマンの友達ならたくさん出来たオレの自慢


11,  あの老人ホームは今どこに  [Track by Composer TAKE]


YouTubeのたった1つの低評価で肩落とす
ふと、昨夜のインタビューで思い出した
昔の話 幼少期のほとんどの時間を過ごした
老人ホーム の話 あそこに入所していた
おじいさんおばあさんが毎日 褒めてくれた話
もうずっと遠い昔の話
老人ホームに併設された雑貨屋を営む祖父母の元で
過ごした日々は

色褪せ なお 輝く

ある日素朴な疑問が浮かんだ
「なんで老人ホームがあるのか?」
ここは、それぞれの人生の終着点でもある
ほとんどのご老人がここで生涯を終える
その理由は、

ある日東京から家族に連れ添われ やってきた
おばあさんが教えてくれた
訛りのない話方が田舎育ち皆には新鮮で

どこか上品に見えた ハンカチで汗を拭きながら見上げた
青い空 店番の度に ご馳走してくれたコカコーラ
「私にはあなたより少し大きい孫がいてねぇ」
なんてね それぞれの人生が雑貨屋の商品棚に映る
「あの最中美味しかった」なんてね

豊かな笑顔に出会えてよかった なんてね

おばあさんはおじいさんと東京で2人暮らしだったけど
おじいさんに先立たれ 一人暮らし
息子夫婦が心配し同居を申し出たが
おばあさん 最後は自然豊かな田舎で思い出と過ごしたいって
本当は息子夫婦に気をつかったんだって
遠く遠く 見えるはずない 東京の方 見ながら言ってたっけ

たくさんのご老人が自分の今日までの話をしてくれた
戦争の話 亡くなった奥さんの話 友人の話

ペンキがはがれたベンチに腰を下ろし 
見つめてた 盆踊りの練習
古くさびれたコンセント
かすれたボタンの公衆電話
その受話器の先にいつも笑いかけてた おばあさん
夕方 蚊取り線香 の後を追う様に 夕飯の香り

弟とキャッチボールするだけで
ギャラリーは湧き
紙芝居披露した多目的ホール
ご老人達の鳴りやまない 拍手に包まれた

近所の高校生の万引きを皆で追いかけたり
彫刻刀の使い方を教えてもらったり
捨て猫の世話をみんなでしたり
あの老人ホームは今どこに

季節が変わる毎に 大人に近付き
夜中に鳴り響いた救急車のサイレンにも
いつからか慣れていった

だんだんと
老人ホームから 遠ざかっていった
挨拶も駆け寄ることなく
その場で会釈に変わっていった

あの日と同じような 汗ばむ初夏の日差し
東京から来たおばあさんが亡くなった
みんなに宛てた手紙の一文

「あの子は繊細だから、皆がたくさん褒めてあげてください
そしたら、その先、傷つく事があっても
それまで褒めてくれた皆の言葉が 守ってくれる 
その言葉の中で私も生き続ける」

オレの初ステージはあの老人ホーム
あなた方が思い出を映した幼いスクリーンは
傷付きながらも まだステージの上にいる
あなた方の言葉と

あの老人ホームは今どこに
そっか今日もこの言葉の中に